未来に向けて発車

自動車業界の将来を握る部品サプライヤー

QRコード
日常的に使用している商品の隅によく見られるバーコード「QRコード」の発明者は? 日本の自動車部品メーカー、デンソーである。トヨタの製造工場における自社製パーツのトレースを目的として、デンソーは1994年にこの革命的技術を開発した。その5年後、同社がこの技術を無償公開すると、QRコードは世界中で目覚ましい普及を遂げることとなった。
この逸話は、日本の大手部品サプライヤーの優れた技術力を如実に示すものだ。固定観念的なイメージとは異なり、日本の自動車部品サプライヤーは模倣よりもむしろ発明を得意としてきた。その理由は? これらの部品サプライヤーは、業績の良し悪しに関わらず、常に研究開発への努力を惜しまなかったからである。その筆頭に挙がるデンソーは毎年売上高の10%を研究開発に投入、これは同社営業利益の2倍にも相当する額だ。
品質向上に向けたこの努力により、大手日本サプライヤーは、今なお価格面で勝負している韓国や中国の競合他社に先んじることができたのである。Invest KOREAの調査によれば、韓国部品サプライヤーの製品は日本の競合各社より25%安いが、創造性に関しては25%、耐久性についても25%劣るとの報告がなされている。「日本製パーツを使用」という謳い文句は、今では新興国の自動車メーカーが持ち出す営業上のアピールポイントとなっているほどだ。「中国では、日本製のエンジンを搭載していることが、中国車を販売する際のセールスポイントになっています」と述べるアナリストもいる。その結果、世界の部品サプライヤー上位100社にランクインする日本企業が26社を数えるが、一方で韓国企業は4社、中国企業に至ってはゼロという状況に至っている。日本の部品サプライヤーはその技術力の確かさで、今や自動車メーカーを凌駕する勢いだ。「自動車製造コストの70%を占めるのが部品調達コストで、その次がマーケティング費用です。もはや組み立て には大した価値がないのです」とトヨタの幹部も不安を隠さない。CLSA社のディーン・エンジョウ氏は「 かつてはメーカー側がサプライヤーに対しその意向を指示していたのですが、今ではこの関係が逆転しそうな按配です」と述べている。

省エネ
世間の声も喧しいエネルギー消費の問題を前に、こうした先進技術の重要性はいや増すばかりである。「我々の仕事、それはCO2排出量の削減です。」この言葉は、フランスで緑の党の党首を務めるセシル・デュフロの口から発せられたものではない。何を隠そう、ヴァレオジャパン社長、齋藤隆次氏の発言だ。同社やその競合他社にとって、特にエネルギー効率の分野における発明力には会社の生き残りがかかっている。環境保護のための規制は年々厳しさを増し、原料価格は上昇一途、そして、多くのドライバーもより環境にやさしくかつ低燃費の車を望んでいる。
これはエンジンメーカーだけの課題ではない。1台の車を構成する3万個もの部品全てが省燃費に一役買うことができるとなれば、これら部品メーカー全ての貢献が求められることになる。例えば省エネヘッドランプ(スタンレー電気のLEDヘッドランプ)、軽量シャーシ(フォードは2015年にアルミ製シャーシを採用した軽トラックを発売予定)、改良タイヤ等々……「車のエネルギー効率の30%はタイヤにかかっていると言われています。自動車メーカーにとってニューモデルの燃費を大幅に改良するための簡単な方法は、従来式のタイヤをエコタイヤに替えることです」とはディーン・エンジョウ氏は指摘する。またフランスのHEFグループは自動車部品間の摩擦軽減、すなわち省エネルギーを目的とする部品の表面処理を提案している。「日本人、特に小型車のドライバーには、燃費を重視する傾向が強まっています」と、同社の日本事務所代表の一人ジュリアン・グリモー氏は述べている。
こうした「緑の革命」の最初のターゲットは、言うまでもなく無公害車である。電子制御装置やインバーター、バッテリー等々……電子部品のぎっしり詰まったエコカーは、部品サプライヤーだけでなく電子産業分野にも新たなビジネスチャンスをもたらしている。例えばセラミック部品を製造している村田製作所にとっては、より高度な技術を求めて止まない自動車業界が頼みの綱となっている。

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