歴史: 1988年8月10日は、市民自由法記念日

アフガニスタン紛争の勃発時、キューバのグアンタナモ湾収容キャンプに収容された戦争捕虜の拘禁騒動は、しばらくのあいだ忘れ去られていた事実を思い出させた。それは、第二次世界大戦中にアメリカが開設した日本人強制収容所のことだ。1988年8月10日にロナルド・レーガン(当時)大統領が署名した市民自由法が制定されてからちょうど25周年にあたる。

強制収容所の設置
1941年12月、アメリカが日本に対し宣戦布告を宣言するに至ったハワイ真珠湾海軍基地への奇襲攻撃は、当時アメリカに住んでいた126,947人の日本人(そのうち62%がアメリカ市民権を所有)に衝撃的な結果をもたらした。真珠湾攻撃と時を同じくし、「敵対市民」名簿が作成され、日本人に加えて、イタリア人やドイツ人が付け加えられた。厳重な監視の下、日本人はサンフランシスコの海岸エリアへ避難を余儀なくされた。しかし非常に早い段階で、アメリカ当局は在米日本人に対し監視を強め、彼等は軍隊や公共サービスから離れなければならなかった。宣戦布告なしのアメリカに対する直接攻撃は、以前よりメディアや映画の中で表現されて有名になった「黄禍論(黄色人種脅威論)」を証明したにすぎなかった。
地元当局から圧力をかけられたフランクリン・D・ルーズベルト大統領は、その年の選挙も考慮に入れ、1942年2月に「大統領令9066号」の発令に署名した。この発令により、軍管理地域に指定された場所では、国家に脅威をもたらすと判断された、いかなる市民を強制的に逮捕することを認めた。このことで、アメリカ市民権を持つ何百万もの日本人は、時には48時間以内という短い時間で、指定された管理地域からの退避を余儀なくされた。彼等は、まず軍指揮のもと集合所に送還され、その後1942年に彼らを収容するために作られた強制収容所へ送還された。軍は、その場所を公には「移住センター」と呼んだ。厳しい監視下のもと、輸送列車に乗せられた日本人たちは、僻地に連れていかれ、木造の粗末な小屋へ詰め込まれた。まるで囚人の扱いのごとく、年齢、性別などにより分離され、時には家族とも離され、食料も不足した。11万人以上の日本人が、アメリカ全土(カリフォルニア州、アリゾナ州、ワイオミング州、コロラド州、アーカンソー州)に分散するように作られた10カ所の収容所に詰め込まれた。収容所は、一列に並んだ木造家屋で形成され、自動車や消費の対象となるものはなかったが、図書館や食堂、映画館があった。なかには、教師を務める者や、図書館や庭の世話をする日本人もいた。

戦後
1944年6月30日、アーカンソー州のジェローム強制収容所が最初に閉鎖され、12月17日には、「囚人の権利」が認められ、社会復帰のため失った家や財産を取り戻す事が出来た。1946年3月30日、カリフォルニアのツール・レイク強制収容所が最後に閉鎖した。その後連邦最高裁は、社会的排除や市民権の略奪、また収容所への強制収容は、市民権の明らかな侵害であったを認めた。1988年8月、ロナルド・レーガン大統領は事実を認め日系アメリカ人に謝罪し、現存者に2万ドルの損害賠償を行った。これが有名な「市民自由法」である。その5年後、ジョージ・W・ブッシュ大統領は強制収容所の収容者とアメリカ軍として戦った33,000人の日系アメリカ人を追悼するため、ワシントンに記念碑を建てることに同意した。その記念碑の完成記念式典で、クリントン大統領はワイオミング州、ユタ州、アイダホ州、アーカンソー州の収容所の保存を発表した。

25周年
市民自由法25周年にあたるこの夏、アメリカ国立公文書記録管理局はJACL(日系アメリカ人市民同盟)と連携し、記念式典のために市民自由法のオリジナル文書を公開した。1941年、カリフォルニアの高校でカウンセラーをしていた79歳のフィル・シゲクニ氏は、彼を含めた日系2世が「戦後も偏見に苦しみ、その全てを耐えなければならなかった。レーガン大統領の署名は、私の人生で最も重要な出来事の一つであり、アメリカ市民として再び生を受けた気がした。米政府は私達を敵とみなし、日本にいる日本人と我々が違うということを理解できず、我々を強制収容所に閉じ込めた」と述べた。JACL会長であるプリシラ・オウチダ氏は、2001年9月11日アメリカ同時多発テロ以来イスラム教徒に対する偏見や差別的な行動を取るアメリカに、あの歴史を思い出すことを求めている。「今政府は、少しでもテロリストとしての疑いがあれば、特定の理由なしに人を拘束できます。それは第2次世界大戦中、アメリカが日系アメリカ人にしたことと同じです。全てのコミュニティの市民の権利を守るため一緒に行動しよう」と国民に大きな声で訴えかけている。

クリスチャン・ケスレー:歴史家、東京アテネフランセ講師。数々の大学にて教鞭を執る。

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