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欧州連合、日本そして米国

「各国大臣、産業界、消費者団体、そしてあらゆる関係者が日本・EU経済連携協定(EPA)を歓迎しています。今後はその実施状況を見守っていく必要があるでしょう」ベルント・ランゲ(写真)欧州議会国際貿易委員会委員長は、議員団による9月の日本訪問をこのように締め括った。ランゲ議員によると、日本と欧州はドナルド・トランプの保護主義に対抗して手を結ぶのだという。「トランプ大統領は世界貿易の枠組みを攻撃しています。自動車や鉄鋼、アルミニウムなどに高い関税をかけるぞと日本を脅している…… 私たちは脅迫的な手段に訴えることもなければ、外部の圧力に屈することもありません。日本やカナダなど、同じ考え方を持つ国々と手を取り合って前向きに取り組むだけです。貿易協定のモデルとも言えるこのEPAが実施されれば、環境基準や労働者・消費者の保護水準の向上にもつながります。世界GDPの30%、世界貿易の40%を占める日本と欧州間で締結されたこの協定は、強力なメッセージとなるでしょう」と期待も大きい。日本にとって欧州連合は、米国よりも大きなサプライヤーだ。2017年、日本は8兆6570億円の物品とサービスを欧州から輸入しているが、米国からの輸入額はこれを下回る8兆900億円だった。米国が対日貿易赤字を糾弾する一方で、EUは日本との間でほぼ完璧な貿易均衡を実現しており、EPA両当事者間の安定した政治的関係をここに読み取ることができる。EPAは来年3 月までに欧州議会で批准される見込みだが、この時期はブレグジット、そしてこれに続く5月の欧州選挙と、目を離せない行事が目白押しだ。


 飛行機の国

日本は列車と自動車の国、と紹介されることが多い。だがここは飛行機の国でもある。世界で最も利用者数の多い各国国内線トップ10のうち、3路線が日本国内を就航している。札幌~東京便(年間870万人が利用)、福岡~東京便(790万人)、沖縄~東京便(530万人)は、それぞれ3位、4位、10位につけた。日本の国内線利用者数が世界の国内線トップ10に占める割合は28.4%。世界トップの路線は済州島~ソウル便の年間1350万人で、1 日あたりの運行数はなんと180便だ。


 絶滅が危惧される生産年齢人口

先進諸国における15~64歳の年齢層は、2011年まで年間200万~600万人のペースで増加していた。ところがその後の7年間、この年齢層の人口は毎年250万人ペースで減少に転じている。日興アセットマネジメントは最新の報告書で、日本ではこの逆転現象が1990年代半ばから始まっていたと述べている。つまり日本は今後他国が迎える現象を先取りした実験室のような位置付けにあるというわけだ。1990年半ば以降20年間にわたり日本の15~64歳人口は減り続け、これに伴い税収も減少している。その一方で年金生活者が増え、医療関連歳出は増加の一途を辿っている(1990年以降+140%)。国は歳出と歳入の差を穴埋めしようと国債を発行し続けており、債務残高対GDP 比は過去20年間で65%から230%へと膨れ上がった。しかし政府は女性や65歳以上の高齢者雇用を促進するなどして、2012年以降は生産年齢人口を何とか増加に転じさせ、これにより税収を過去最高だった1989年レベルまで引き上げることに成功した。この報告書の著者、クリス・ランズは「労働の奨励が、生産年齢人口の減少をカバーするための政府の重要施策となっていることが、ここによく示されています」と指摘している。


 わが社の外国人管理職はゼロ

フォスター電機をご存知だろうか。この音響機器(ヘッドフォン、スピーカー)メーカーは、従業員に占める外国人の比率が最も高い日本企業である。その割合は…… 何と98.9%! 東洋経済のランキングによると、総従業員数4万9194人のうち日本人はわずか524人。ちなみに日本国内にフォスターの工場はない。
前記ランキングの上位につけた企業のほとんどが電子機器と自動車のメーカーだ。ところで、ほぼ全社に共通するのが外国人管理職の明らかな不在である。日産自動車(管理職の5.9%が外国人)や野村ホールディングス(同4.1%)などは例外的な存在だ。フォスター電機にしても管理職の97%は日本人だ。ランキング上位100社のうち37社に至っては、外国人管理職が一人もいない。東洋経済によれば日本企業はこうした現実を十分理解しており、状況は変化しつつあるというのだが……


 帰化

スイスは人口837万人、どちらかと言えば閉ざされた国だが、2017年には外国人46060人の帰化を認めた。これに対し人口1億2700万人を擁する日本の帰化許可者数は10315人に過ぎない(うち84.5%が中国人と韓国・朝鮮人)。人口規模を勘案すると、日本の帰化許可者数はスイスの僅か68分の1になる。


 携帯電話業界に激震

政府は、日本の携帯電話事業者の利潤に手をつけようとしている。ソフトバンク、AUおよびNTTドコモの3社に対し、菅義偉官房長官が突然の警鐘を鳴らした。「競争が働いていないと言わざるを得ない。(各事業者は)国民の財産である公共の電波を使用している。事業で過度な利益を上げるべきでなく、利益を利用者に還元しながら広げていくべきだ」と、この絶対権力者は公言した。官房長官は日本の状況を英国やフランスなど他の先進国の市場とも比較した上で、日本の事業者は今よりも4割程度料金を下げる余地がある、と述べている。読売新聞はこの発言を後押しするかのように、東京と主要大都市の料金を比較、東京の携帯電話料金はパリの4.5倍に相当すると報じた。東京の電話料金は2014年以降10%下がったが、パリでは実に70%もの値下げが行われている。

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