生の声を現場から

日本におけるイノベーションの現況は? フランス技術EXPOへの参加を予定しているフランス企業の事例を紹介しよう。 マニュエル・ヴァルス首相の訪日を機に、東京の日本科学未来館で開催されるこのイベントには、「フレンチ・テック」ラベルを掲げるフランスのスタートアップ企業も出展。近い将来、これらの企業が提供するサービスを多くの日本人が利用することになるかも……


エムシードゥコー
ストリートファニチャー関連サービスやこれに付随するビジネスモデルに関して、日本はまだ遅れています。まだサービスの提供されていない街もあるストリートファニチャーの資金源は、バスシェルターを除けばいずれも税金で賄われており、提供されるサービスもどちらかと言えばごくベーシックなものです。そんな中、エムシードゥコーは日本を拠点にさまざまなイノベーションの発信を開始しました。100%広告収入を原資とするバスシェルターとその関連サービスを皮切りに、災害時の情報提供を行うストリートファニチャーなどの新しいサービスも提案しています。現在のところ、こうした試みは日本国内に限られたものですが、地震の多い国などを中心に世界に向けて輸出していくことも想定されるでしょう。輸出先としては、例えばインドネシアやアメリカ西海岸などを考えています。
ジャンコーム・ランフランキ

日本エア・リキード
環境に優しい再生可能エネルギー源への移行が世界的な課題となる中、ここ日本では他に先駆けて水素社会の到来が具体化しつつあります。世界の産業ガス分野を牽引するエア・リキードは、製造・貯蔵から供給、エンドユーザーによる利用に至る水素関連産業チェーン全体を統括しています。当グループは世界中で水素ステーションの整備を進めていますが、日本においてはトヨタ自動車と協力関係を結ぶ機会を得て、この新たなエネルギー形態への移行に向けた取り組みを推進しています。
セルパン・カンタキュゼーヌ


Orange Fab Asia
日本には将来有望なスタートアップが数多く存在します。しかし、国内に安住している内弁慶も多いことを認めざるを得ません。日本の起業家の眼前には幸運にも巨大な国内市場が広がっているわけですが、国内市場に恵まれるあまり海外に目を向けず、結果として十分な競争力を備えた会社規模にまで成長できなければ、こうした状況はリスク含みとも言えるでしょう。台湾やシンガポールなどもっと小さな国で起業すれば、当初から「世界」展開を見据えざるを得なくなるはずですから。こうした観点から、Orange社では日本のスタートアップ企業に対し当社のグローバルなビジョンを提供するなど、その成長に向けたお手伝いをご提案しています。
ジャンミシェル セール


ヴェオリア
160年の長きにわたり環境関連サービスを提供してきたヴェオリアは、水、エネルギー、廃棄物処理分野における世界のリーディング企業です。他方、このセクターで事業展開している日本企業は、高度な専門性を有するテクノロジーを開発し、高い品質基準を培っていると考えています。ヴェオリアはこれら日本企業と連携し、日本を始め世界各国の自治体や産業界の顧客向けに革新的なソリューションを提案することで、資源消費型の社会から循環型社会に転換するために、資源の利用方法を進展させ、資源を保護・再生する « Resourcing the world »の理念に貢献しています。


タレス
日本進出から45年、タレスは顧客やパートナー企業と緊密な協力関係を築いてきました。日本のパートナーは、昔から変わらず開発努力を惜しみません。彼らは常に新しいテクノロジーを探究し、完璧なサービスと品質を追求しています。理研播磨研究所による当社ペタワットレーザーの採用やJR東日本におけるCBTC列車制御システムの導入など、このイノベーション大国において当社製品が複数採用・導入されていることは、当グループが築き上げてきた協力関係の成果と言えましょう。これを励みに当社としても日本の産業界との連携を今後さらに推し進めていきたいと考えています。


アリアンスペース
宇宙開発分野における日本のイノベーションの多くを担っているのは、国の宇宙開発機関と政府主導の開発プログラムに参加する一部企業です。限られた予算を補うにはイマジネーションが不可欠ですが、優れた専門技術の中から成果が生まれています。


ヴァレオ
日本はグローバルな自動車メーカーの本拠地であり、日本のカーメーカーはハイブリッド車や軽自動車のような革新的で洗練された技術を開発しています。また、日本企業は生産システムや品質管理などにも大変優れています。日本メーカーは、以前は自社の系列企業と仕事をしていましたが、技術の幅を広げグローバルなニーズに応えるために、ヴァレオのようなグローバルサプライヤーにも門戸を開くようになりました。ヴァレオは世界中の自動車メーカーのパートナーとして仕事をしており、世界の自動車業界の技術動向や専門技術を提供することができます。ヴァレオはテックカンパニーとして、CO2 排出量の削減と直観的なドライビングの発展に貢献する革新的な製品とシステムを取り揃えています。日本のカーメーカー各社とヴァレオがさまざまな分野で協力することにより、イノベーションがより豊かになり、明日の車に向けた技術開発が加速されるでしょう。
  齋藤 隆次


ミシュラン
安定した政治状況、ハイレベルな研究者とエンジニア、守秘義務の遵守、知的財産権の保護、雇用者に対する忠誠心――当社がアジア地域の研究開発拠点をここ日本に構えている背景には、こうした様々なメリットの存在があります。日本のサプライヤー、メーカー、そして顧客の間に築かれた親密な関係をビジネスに取り込むためには、この地に拠点を置く必要があるわけです。創設から25年、当社屈指のこの開発拠点には、現在研究者300名を中心に総勢約400名が勤務しています。世界に進出する日本の自動車メーカーや部品サプライヤーと共に成長してきたこの開発拠点は、グループにおける先進的な研究(騒音、冬季のグリップ性能)の牽引役としてミシュラン・グループの世界展開に貢献するとともに、日本国内では製品開発のほかメーカーの動向に関するフォローアップなどにも取り組んでいます。日本における研究開発努力がグループ全体に奮起を促す呼び水となり、世界中で高く評価されるミシュランの技術力向上に一役買っているのです。
ベルナール・デルマス


サノフィ
日本では生命科学や基礎医学の分野で世界一流の研究が活発に行われています。特に近年は、革新的な基礎研究の成果を実用化へ橋渡しするトランスレーショナルリサーチが積極的に行われ、新薬創出における活動の強化が進んでいます。サノフィにおいても社外パートナーとの提携・共同に力を入れ、日本の人々のアンメットメディカルニーズに応える革新的な医薬品を開発してまいります。
ファブリス・バスキエラ


CEA(原子力・代替エネルギー庁)
CEAが提携する日本のパートナーは、当庁の管轄分野において数多くの科学技術イノベーションを推進しています(特に原子力や再生可能エネルギー分野など)。日本との協力関係においては、とりわけイノベーションを産業レベルで実証していくステップが共同作業の対象となっており、その目指すところは両国の力を結集して世界に類を見ないプラットフォームを実現することです。一方日本以外の各国との協力は、学術的研究からイノベーション、実証作業、プロトタイプの製造を経て工業化に至る流れの中で上記以外のステップを対象とするケースが多く、その意味で日本は特別な存在だと言えましょう。


アルカテル・ルーセント
携帯電話業界において日本は3Gのパイオニアであったわけですが、5Gの普及を前に再びリーダーシップを発揮しようとしています。こうした観点から見て、2020年のオリンピックは携帯電話事業者が電気通信ネットワーク分野の最新イノベーションを披露するまたとない機会となるでしょう。 民間セクターによる莫大な投資や新しいテクノロジーへの関心、そして業界だけでなく一般市民やメディアなどの間にも広く浸透する高級サービス志向など、日本にはイノベーションの育つ環境が整っています。日本はいつも他国に数年先んじているのです。
ニコラ・ブーベロ


フランス国立科学研究センター(CNRS)
日本では20年以上にわたり、サイエンス分野におけるパートナーシップを発展させてきました。特にミクロ/ナノメカニック、ロボット工学、情報科学、イノベーションの4分野において国際共同研究ユニット(UMI)を拡充しています。同ユニットの一つであるLIMMS(東京大学との共同研究)は、ある技術をビジネス化するベンチャー企業を生み出しました。さらに今年10月からは京都大学の産官学連携本部(SACI)と国境を超えて、経験とノウハウを共有していく予定です。


ダッソー・システムズ
テクノロジーやナレッジ、ビッグデータなどが3Dモデルによって連携し相互に参照されることで、より優れたエクスペリエンスを作り出し、より高次のイノベーションを実現します。3D モデルほど、言語や文化、分野の垣根を越えて、「それが何であるか」をダイレクトに伝えられるものはなく、その力は、自動車や飛行機、建築物といったものから、スポーツシューズやスマートウォッチ、ショッピングセンターの売り場、人体の各部位など、あらゆる事物に及びます。ダッソー・システムズは3D モデルを作成・共有するためのシンプルな機能を統合した「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」を生み出しました。3Dモデルは、エクスペリエンスの創造とイノベーションの実現に向けた世界の共通言語として活躍します。最終製品がもたらすだろうエクスペリエンスを構想、設計、検証し、生産やマーケティングまでも連動させていくことが可能です。

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