産業:ロボット再び

人手不足を補うために、日本では労働者にかわりロボットが使用されるようになってきている。CCIFJの求人情報「Le Bulletin Emploi」にロボット募集欄が登場するのも間近?

模範的な従業員

2012年、グローリー社埼玉工場に勤務していた従業員数は総勢320人であった。いずれも「人間の」従業員である。そしてこの4月から、同工場の従業員数は333人に増加した。だが製造チームへの配属を見込んで新規採用されたのは、男性でも女性でもない13体の人型ロボットだったのだ。彼らロボットは、グローリー社が世界をリードするレジの釣銭処理機組み立てラインで働いている。このように極めて洗練されたロボットが連携してライン上の作業を行うのは、世界でも初めてのこと。同工場長の圓尾勝彦氏は「ロボットは日本の未来を背負っています」と豪語する。同氏の認識はシンプルなものだ。「潜在的な労働力は減少の一途にありますし、若者は流れ作業の単純労働を好みません」ロボットは高齢化社会が生産性にもたらす悪影響を軽減してくれる。事実、日本における人口減少はすさまじい勢いで進んでおり、例えば昨年の出生数はわずか103万人だったが、同年には124万もの人が亡くなっている。移民の出入りは差引きするとほぼゼロに等しいので、日本はこの間実に20万人もの人口を失ったことになるわけだ。しかもこうした現象には、将来的にさらなる加速が見込まれている。政府予測によれば、今後数十年の間に日本は毎年約100万人ずつの人口減少に見舞われるという。こうした状況下、ロボットは日本産業にとって生産性向上と輸出力アップに向けた大きな鉱脈となるだろう。CLSAアジアパシフィックマーケッツの業界アナリストであるモルテン・ポールセン氏は、産業ロボットがまだ発展途上の中国で、日産自動車の従業員1人あたり製造車両台数が1.75台に過ぎないのに対し、日本ではこの値が1人あたり35台に達する、と 指摘している。

ロボットによる人間の解放

グローリー社では将来的な成長を見据え、川田工業との提携のもと15種類もの作業をこなす次世代人型ロボット「ネクステージ」の開発に1年前から取り組んできた。工場の2階、そこで働く労働者から数メートルの場所に配置された4体のロボットは、目の役割を果たす小型カメラを備えた関節式の頭部、人間的な動きを再現した2本の腕、そして回転台の上に組み立てられた胴体を備え、釣銭処理機部品の組み立て工程に従ってこれら部品を次々と組み付けていく。個々のロボットは、必要な作業内容に応じてその手に異なる工具を取り付ける。組み立てが完了すると、ねじやゴム、その他のプラスチック製部品の入ったトレイを片付けながら、自ら作業プランを再編成する。部品が足らなくなれば、ロボットはくるりと回転してその背面にある保管場所から必要な部品の入った容器を取り出してくる。さらに、非常に壊れやすい部品の保護テープを、極めて慎重な手つきで剥がし取る。「このロボットの生産性は人間と比較するとその80%程度ですが、人との違いは彼らが休憩を取らず、週末も休まず、その他の休暇もなく、さらには夜にも働けるという点にあります」と圓尾氏は笑顔で答える。同氏はいくつかの組み立てラインにおける人型ロボットと人間、あるいは従来型の産業ロボットとの連携も試みている。「旧式ロボットは仕事が速く、かつ精確なのですが、こなせる作業の種類に限りがあり、人型ロボットのような柔軟性や繊細さを持ち合わせてはいません」と同氏は説明する。

この工場では、ネクステージが導入されたことで、最も精緻な作業を要するポストに人的マンパワーを配置することが可能となっている。「私どもは、副次的・反復的な作業から人間を解放し、彼らがよりクリエイティヴで付加価値を生み出す仕事に専念できるような環境を作りたいと考えているのです」と述べるのは、日本のロボット製造業の第一人者、川田氏。「これら人型ロボットはもはや単なる設備ではなく、労働のパートナーなのです」――これは機械サプライヤーとして顧客企業の情報処理プログラムやその「労働力」開発を支援している同グループのニュースリリースの言葉だ。川田工業のエンジニアは、これら「新入社員」の働きぶりをさらに改善する目的でグローリー社工場に詰めている。

グローリー社が購入したネクステージ1体の価格は740万円(60,000ユーロ)。これは同社における従業員1人の年間人件費とほぼ同額である。「この投資額は2年以内に償却し、その後はロボット1体あたり1ヶ月1,600円(13ユーロ)の電気代がかかるだけです」と説明する工場責任者は、これら新型機械の導入に対し労働者側が異を唱えたことはないと述べる。彼らは以前から工場の自動化に向けた取り組みを経験しており、日本国内におけるマンパワーの枯渇についても十分認識しているからだ。

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