論点

日本を侮ると痛い目にある。フランスのリーダーたちの証言

損失
日本はあらゆる分野において少なからずフランス企業の革新的な要石である。研究者の数の多さ(人口比率では最多)、知的所有権保護システム、さらに人口1億2千万人の「テスター」が新製品を期待していることなどが、革新的な技術の発展にとって理想的環境である。「日本人はイノベーションにとても敏感です。当社では常に売られている昔ながらの製品もありますが、オイコスヨーグルトのようなユニークな製品もとてもよく売れています」とダノンジャパンの研究開発部門を担当するデュック・エングイエン氏は説明する。
日本ミシュランにおいては、太田市にある研究開発センターで300人の研究者がタイヤ音の減少や冬期用タイヤの改良に取り組んでいる。「25年前に開発に乗り出した結果、世界の自動車メーカーや部品メーカーの発展に我々も足並みをそろえて進むことができました。」と日本ミシュラン社長ベルナール・デルマス氏は語る。仏自動車部品メーカー、フォレシア社についていえば日本における研究開発力を常に向上させた。一方、日本の自動車メーカーや部品メーカーは、今でも限られたグループの中で機能しており、内輪でフォレシアのようなイノベーションを見つけようとしているが、「グループを切り離す」ことができない。「私たちは100%リサイクルが可能な新しいプラスティック素材、生物由来樹脂の基本研究を三菱化学と行うプロジェクトがあります」とフォレシア・ジャパン代表のオリヴィエ・フィドリー氏は語る。

研究開発
通信の分野ではアルカテル・ルーセントが昨年9月、バーチャル研究開発センターである「カスタマー・ネットワーク・センター(CNC)を設立した。そこでは顧客が技術の未来世代を共同開発することができる。「日本は一歩先を行っている国です。高速度伝送の浸透度はフランスの5%に対し、80%に達しています。この国は4G(第4世代移動通信システム)でも先駆者でした。日本人は2020年のオリンピックを見据えてすでに5Gに取り掛かっています」と同社前グループ社長のミシェル・コンブ氏が前回日本を訪問したときに語った。ゲーム機による発展モデルがうまくいっていないビデオゲーム界でも、日本の業界はおそらくゲーマー用語でいうところの「パワーアップ」を見つけ出すだろう。「日本は新たに重要な選択の岐路に立っています。培われた技術とイノベーションのサイクルに必要な資金を今までは享受していましたが、シリコンバレーのスタートアップのオーラはなかったのです。ところが、日本は今、輸出の大きな切り札をイノベーションに取り入れています。それは日本のポップカルチャーです。この先数年以内に文化とイノベーションが融合することになるでしょうし、必ずや、日本がその分野で最先端になるはずです。」とゲームロフト代表取締役アレクシー・グレゾヴィアック氏は説明する。

素顔
化粧品においては日本ロレアルが、日本人の性向調査のために総勢200人以上の体制で 研究開発センターをかまえている。更に、各ブランドのあらゆるイノベーションもある。「日本の教育レベルは高いのですが、非常に影響されやすく、消費者の要求が厳しい市場です。そのような市場が化粧品業界の発展を助けているのです。『日本テスト』に合格した製品は他の国に対しても自信をもって打って出ることができます」と日本ロレアル社長ジェローム・ブリュア氏は語る。同じ業界のピエール・ファーブルグループは日本に研究開発センターを開設したばかりだ。「日本では技術的イノベーションはとても早い段階で総体的に受け入れられます。ヨーロッパでは新製品を生み出した企業はそれが模倣されるまでに1年半は安心して成功を満喫していられますが、ここでは良い製品には、即飛びつき、すぐにコピーが出現します。というわけで我々はいつでも激戦地にいるのです」とグループの日本代表ローラン・マルタン氏は言う。
イノベーションは日本の社会ではどの業種にも等しくある。例えば、農業が瀕死の状態にある日本が種苗において世界のリーダーであるのだ。フランスのリマグラン社の子会社であるみかど協和は日本に2つの研究開発センターがあり、40名の研究者を雇用している。この分野の将来の一部は、ここで決定される。「日本はロボット技術と農業が協力しあう自動化農業分野に優れ、300のサラダ菜工場があります」と解説してくれたのはみかど協和の社長ヴァンサン・シュピオ氏だ。同社はアジアに向けた発展のプラットフォームを日本に作った。「日本の農業技術者と研究者は我々の投資期間を考えれば高くはありません。新しい種苗を完成させるには10年から15年は要しますから」とシュピオ氏は締めくくった。

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