身動きとれず

難航する日EU間EIA交渉

遅れ
日本とアジア太平洋地域の加盟国との間で締結されたTPPは、日EU間の経済統合協定(EIA)の交渉を加速させるはずであった。「当初は非常に楽観的だった」と交渉に関わる欧州の外交官は思い返す。
交渉がこれほど長引いたことはこれまでなかったのではないだろうか。いずれにせよ、日本の7月に行われる参議院選挙前に交渉はまったく進まないと欧州側はみている。EUによると、日本側は欧州との交渉が米国とのTPPの最終的な合意に影響を与えることを懸念するあまり、日本はEIAの有意性如何を問わず、交渉に関わることに消極的であるという。日本側は、TPPを上回る水準の市場開放を欧州に約束することはできないとし、「TPP同等」の協定を主張している。日本は、巨大な市場であり日本の防衛を保障する米国との協定の合意を危険にさらしたくはないのである。

不協和音
欧州と米国を同じ計画上に位置付けることはナンセンスである。EUと米国の優先課題は同じではない。「日本側は実質上、米国とは可能な限り最善を尽くして協定交渉を行い、TPPがEUにとっても十分良いレベルであると説明している。しかし、我々はTPP+αを求めているのではない」とEIA交渉関係者は話す。例えば、EUは加工農産品の輸入時の規制上や検疫上の障壁削減を求めているのに対し、米国がこだわるのは農産物の貿易障壁の撤廃である。また、原産地表示についても米国とは異なり、欧州にとっては最重要な意味をもっている。
いくつもの省庁が省庁間で適切な調整を行わずに交渉に関与していることが、日本の交渉をさらに複雑にしている。例えば、ワインに関する交渉は農林水産省と財務省の管轄だが、両省は必ずしも同じ見解を持っているわけではない。さらに大きく言えば、EIA交渉は外務省、TPP交渉は総理大臣主導である。日本が野心的な貿易協定に向けた交渉の合意を本気で願うのであれば、曖昧さを脱し、その立場を明確にしていかなければならない。

このページをシェアする Share on FacebookShare on TwitterShare on Linkedin