フォルシアの切り札、クラリオン

Faurecia joue du Clarion

自動車部品メーカーのフォルシアが車載エレクトロニクス分野の世界的リーダー企業、クラリオンを買収。自動車王国、日本におけるフランス部品メーカーの存在感を高めていく。

買収

1410億円(12億ユーロ)。これは仏自動車部品メーカー、フォルシアがクラリオン買収にあたり投じた金額である。日本におけるこの莫大な投資は、今なお自動車部品業界を牽引するこの国の立ち位置を改めて思い知らされる出来事だった。日立グループの花形企業の一角を占めていた車載エレクトロニクスを専門とするクラリオンは、(同じく先頃フォルシアが買収した)コエージェント・エレクトロニクス(中国)、パロット・オートモーティブ(仏)両社と統合され、フォルシア傘下で「フォルシアクラリオンエレクトロニクス」と命名された新たな事業部門を形成する。従業員9200人(うちソフトウエア・エンジニアは1650人)を擁するこの新事業部門は埼玉県に拠点を構え、フォルシアはこれを武器にコックピットエレクトロニクス分野における世界的リーダー企業を目指す。

 

未来

このような事業展開の持つ意味は?フォルシアは未来の自動運転・コネクテッドカーの登場を見据えている。確かに、この種の自動車が普及するまでには長い年月を要するだろう。フォルシアの最高経営責任者パトリック・コラーも、先日東京を訪れた際「いわゆるレベル5の完全な自動運転のためには、1台あたり7万ユーロのコストが追加でかかります」と説明していた。しかし、自動化への流れが今後加速していくことは間違いない。運転から解放された自動運転車のコックピットは、乗員に自宅のリビングさながらの快適性を提供することになるだろう。オンデマンドの映画にゲーム、車室内温度のきめ細やかな管理、道路インフラと連動したセキュリティシステム……フォルシアの関係者は「音響や快適性、安全性に関わる各機能が、アルゴリズムと人工知能によりドライバーのプロフィールに合せて組み合わされます。こうしたシステムを搭載するためには、クラリオンのようなエレクトロニクス専門業者の力が必要でした」と述べている。この関係者によれば、未来の自動車は野外での自動駐車、車室内での居眠り警告システム、高性能オーディオサービスなどを提供できるという。フォルシアとクラリオンがひとつになるメリットは大きい。前者は欧州と北米に地盤を固めており、一方後者は日本で誰もが知る企業だ。クラリオンの主要な顧客は日産だが、フォルシアは今回の買収を機にトヨタやホンダ、スズキなど他の自動車メーカーにも売り込む機会を伺っている。コックピット市場は今後2030年までに910億ドルに達する見込みで、今回の買収はこれを見据えた大きな勝負になる。フォルシアのほか、現代自動車やサムスン、カルソニックカンセイ、ビステオン、ハーマン・インターナショナル、コンチネンタルなども、未来のコックピット創造に向けた独自のソリューションを既に発表している。

 

変貌を続ける日立

クラリオンの売却にみられるように、日立グループはインフラとオートメーション分野に注力すべく再編成を継続している。日本のメディアによると、同グループは化学部門についても近々最高額入札者に売却予定だという。しかもこれは始まりに過ぎない。日立の東原敏昭取締役代表執行役社長兼CEOによれば、現在900社を誇る(むしろそこが弱みなのだが)子会社を、数年後には500社まで減らす予定とのこと。長期にわたり苦戦が続いている同グループは、裾野が広すぎてどの分野でもトップになれない日本の製造業の典型でもある(例えばゼネラル・エレクトリックやフィリップスなどとは対照的)。今後日立は復活の道を歩んでいくだろう。中西宏明取締役会長兼執行役は、数年間でグループのガバナンスを外国の競合他社レベルまで引き上げた。同氏は現在、経団連会長を務めている。

 

フォルシアの新たなパートナー、ジャパンディスプレイ

電子機器イノベーションのメッカ、ラスベガスで開催された2019年コンシューマー・エレクトロニクス・ショー。来場者の注目を一身に集めていたのは、フォルシアと日本のディスプレイメーカー、ジャパンディスプレイ(JDI)が共同開発した製品だった。それはダッシュボードに搭載される車の用途に応じて調整可能な、アスペクト比48:9という超横長32インチ車載液晶ディスプレイだ。両社が発表した報道資料によると「手動運転時には(……)運転に必要な道路情報や安全に関するメッセージを表示します。また、自動運転に切り替えると(……)エンターテイメント・スクリーンとして使うことができます」とのこと。両社は未来の車載ディスプレイの開発に取り組んでいく。

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