ロジスティック:自動化への道

シリル・デュモン:ボロレ・ロジスティクス・グループ アジア太平洋地域担当部長。

しばらく凪の状態が続いていた物流業界だが、当局や消費者からの圧力に晒され、技術面で革命的な変化の時を迎えている。

30年間の平穏

 

改めて全体を見渡してみましょう。過去30年間にわたりこの業 界は、イノベーションによる大変動のない静かな日々を過ごし てきました。業界の常識を大きく破壊する最新イノベーション は何だったかって? それは日本で今も使われているファック スですよ! もちろんこの業界にも漸進的な進歩はあったわ けですが、それは全く「破壊的」なものではありませんでした。 電子商取引の到来により、わずか3年ほどの間に技術的イノ ベーションが洪水のように押し寄せてきました。モノのインタ ーネット(IOT)から諸手続きのデジタル化、予測分析やデータ分析、ドローン、自動運転車、3Dプリント、そしてブロックチ ェーンに至るまで…… これらの破壊的イノベーションによ り、世界の商取引は利害の衝突する不確かな時代に突入し ました。各国は税関手続きを厳格化していますし、特に北ア ジアなど高齢化が進む地域ではマンパワーの枯渇が問題化 しています。これに加え、環境保護規制も厳しくなってきまし た。なにしろ企業が排出するCO2の3分の2は物流業者に起 因すると言われていますから。当然の成り行きとして政府は 関係者に対し環境へのより一層の配慮を求めており、いずれ は世論に押される格好で「グリーン輸送」や「グリーン物流」 を義務化するでしょうが、これは喜ばしいことだと思います。 環境は、この業界で他社に差をつけるひとつの重要な基準 になりつつあるのです。

新たなテーマ

物流業界がこうしたテーマへの対処を求められる一方で、一 般消費者の要求も専門業者並みに高まってきました。今日、 顧客はわずか100円の商品をオンラインショッピングのサイ ト上でチェックし、これをどこでも希望の時間帯に、しかも益 々迅速に配達させることができます。さらにこれらの電子商 取引プラットフォームは、そのマーケティング手法により配送 料がタダ同然であるというイメージを刷り込み、これにより 消費者は物流の手配にはお金がかからないと思うようにな ってしまったのです。

こうした課題にどう対処するべきでしょうか? イノベーショ ンはもちろんですが、特にコラボレーションが重要です。同 じ問題に直面し協力相手にもなり得る競合他社や流通網の ネットワーク接続(IOT)が、システム全体の節約や相乗効果 を実現する唯一の手段なのです。過去30年間、物流企業は FEDEXやUPSなど大手の例に倣い、できるだけ多くの作業 工程を一括管理できるよう統合に努めてきました。今後は分 散する物流チェーンの末端部が共有されることで様々なソ リューションが生まれるでしょう。公的セクターにも担うべき 役割があります。

一例として伝統的な交通手段の代表選手、バスのネットワー クを挙げましょう。都市部では、ラッシュアワーを除くとこれ らのバスには空席があります。一部の国では、既にバスが特 定の配送拠点までの商品輸送に使用されています。配送拠点 から目的地までの最終的な輸送は小企業や個人が請け負い ます。想像してみてください、例えばバスの乗客がスマートフ ォンを利用して、自分が乗っているバスに積まれた荷物のひ とつを近所の家まで届けることに「同意」し、この仕事を引き 受ける見返りとしてバスの運賃として使えるクレジットを受 け取る…… なかなか面白いでしょう? テクノロジーを活 用すれば、こんなことも可能になるというわけです。

こうした進歩を加速させていくには業界内でのさらなる規格 化が求められます(この点について物流業界はこれまで優等 生とは言えませんでした)。その好例がブロックチェーンで、 昨今の関心の高まりは言うまでもありません。これを導入す れば仕事の進め方も根本的に変わることになりますが、その ためにはこのような技術的規格に対する業界全体の合意が 必要となるでしょう。

シリル・デュモン:ボロレ・ロジスティクス・グループ アジア太 平洋地域担当部長。

このページをシェアする Share on FacebookShare on TwitterShare on Linkedin