移動標的

ALI ORDOOBADI (VALEO), HIROSHI NAKAJIMA (DENA), GUILLAUME GÉRONDEAU (DASSAULT SYSTÈMES)

在日フランス商工会議所のシンポジウムにあらゆるセクターから日仏両国の関係者が参集。そのテーマは、形成途上の新たな事業分野「モビリティ」――ルポルタージュ

エキュメニズム

自動車、電車、自転車に飛行機…… 彼らはあらゆる交通手段を 用いてやってきた。去る9月19日、在日フランス商工会議所は、創立 100周年記念事業の一環として華やいだ雰囲気の宴会場八芳園 で、モビリティをテーマとする初のシンポジウムを開催した。日仏 両国ともに大きな決断を迫られているこのテーマについては、今 後も議論の場が増えていくことになるだろう。 現在進行するモビリティ革命の先導役たり得る関係企業がひし めき合う両国。そんな日仏企業の間には、良好な協力関係が築か れている。ローラン・ピック駐日フランス大使もオープニングスピ ーチの中でこの点に触れ、その好例としてトヨタが先頃同社ヴァ ランシエンヌ工場に対し実施した1億ユーロもの投資や、ルノー・ 日産・三菱自動車のアライアンス、日本電産による電気モーター製 造業者ルロア・ソマーの買収、部品メーカーのヴァレオと通信事業 者NTTドコモとのアライアンスなどを挙げた。ダッソー・システムズ のギヨーム・ジェロンドー氏は「私がまだ子供の頃、父は東京の地 下鉄について学ぶために日本を訪れました。父にとって赤坂見附 駅はお手本のようなものでした」と、個人的なエピソードを交え ながら語った。日本政策投資銀行の代表としてパネルディスカッ ションに参加した岸本道弘氏は議論の中で「パリ協定の前身とな るのが京都議定書です。フランスは世界最大規模のグリーンボン ド市場ですが、日本政策投資銀行(DBJ)も本邦発行体として初の グリーンボンドを発行しています」と述べている。このパネルディ スカッションには他にも自動車メーカー(日産)、部品メーカー(ミ シュラン、ヴァレオ)、通信事業者(NTTドコモ)、インターネット関連 複合企業(DENA)、ロジスティック関連企業(DNA LOGISTICS)、ス タートアップ(EASYMILE)など多士済々の面々が顔を揃え、「モビリ ティ」と称する「エキュメニズム(ここでは複数の企業が一致協力す る運動)」に賛同の意を示した。

革命

ヴァレオのアリ・オードバディ氏は、現代社会が革命の時代を迎え ていると力説する。「もう何年も前から、モビリティはセンサーオル タネーター(交流発電機)、センサー、カメラなどと切り離せなくな っています。当社では、例えば人口や都市化の推移、新興国(中国、 インド、アフリカ諸国……)の台頭など、2060年頃までの大きなト レンドを見据えており、これをもとに将来像を描いています。これ までの常識が覆されようとしており、私たちは未知の世界に足を 踏み入れようとしています。専門性の高い部品メーカーであるヴ ァレオにとって、例えばバッテリーや電気通信分野などは畑違い と言わざるを得ません。そこで大学や実績ある企業(NTTドコモ、 キャップジェミニなど)、スタートアップ、投資ファンド等とのパート ナーシップを締結しているわけです。恐らくこの先10年間で、過去 50年分よりも大きな変化を目の当たりにすることになるでしょう」 と同氏は予言する。変化はあらゆる社会に訪れるが、日本社会は その人口動態の性質上、特に大きな影響を被ることになるだろ う。NTTドコモの谷直樹氏も指摘するとおり、高齢化や労働人口 の減少を受け、モビリティ分野における新たなソリューションの 提案が不可欠になるからだ。

人材不足

トラック輸送の専門企業、DNA LOGISTICSの髙嶋民仁氏は、出席 者に向けて警笛を鳴らした。「この業界では経営者の80%が既に 60歳を超えていますし、2024年には30万人ものトラック運転手 が不足すると言われています」。自動車産業に頼るところの大き い国にも大きな変化が訪れることになる。この点についてアリ・ オードバディ氏は「私の子供は双子で24歳になりますが、二人と も運転免許や車を持っていません。彼らは自動運転車の到来を 待っているようですが、これは多くの若者に共通することでもあり ます」 と語る。 ソフトウェア開発大手のDENAでオートモーティブ事業部長を務め る中島宏氏は、自社を取り巻く雑然とした状況を以下のとおり簡 潔に表現した。「この先20年で自動車が劇的な変貌を遂げること はわかっていますが、当社は自動車メーカーではありませんので、 あくまでサービスを提案させていただきたいと考えています。1960 年代、自動車の普及は日本の風景を一変させ、その影響は不動産 業や建設業にも及びました。2020年代には私たちの生活様式も 大きく変化することになるでしょう。当社も是非その一端を担って いきたいと思います。日産などモビリティ分野に関わる各社との 提携を進めているのはまさにそのためです」。また同氏は「プロ野 球チームを買収してからは球団経営が当社の主たる業務だという イメージがついて回りますが、3年後にはモビリティ分野への進出 を果たしているはずです」と冗談交じりに語った。

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