セクター&市場
ESCPビジネススクールの視察研修旅行:日本の金融市場の仕組みを学ぶ

在日フランス商工会議所は、世界最古のビジネススクールであるESCP校のエグゼクティブMBAプログラムの学生を対象に視察研修旅行を実施。参加者は、日本の金融・資本市場の仕組みと動向について理解を深める機会を得た。
日本の金融・資本市場を理解するには、市場を構築する機関、革新を推進する企業、安定性を支える法的枠組みなど、さまざまな関係者に触れる必要がある。今回の視察研修旅行は、在日フランス商工会議所とESCP校が共同で企画し、戦略的ファイナンス分野のエグゼクティブMBAプログラムの学生を対象に実施した。
東京での1週間に渡る集中的なプログラムを通じ、経営幹部や金融専門家である参加者は、日本の金融構造について視察。マクロ経済、銀行業務、フィンテック、法規制、ESG、M&Aといったテーマを統合的に学ぶプログラムにより、単なる視察にとどまらず、各構成要素が相互に作用し、世界有数の先進経済を支えている仕組みを理解することを目的とした。
1日目:日本の経済と金融イノベーション
視察研修旅行は、東京での日本の経済・法務・金融環境の包括的な紹介から始まった。参加者は、以下の専門家によるセッションで日本のマクロ経済、ビジネス慣行、税制、法制度について学んだ。
- Arthur Sogno-Pèes氏(在日フランス大使館 経済部):日本の経済の全体像について包括的な概観を提示。
- Emilie Teruel-Esclattier氏(在日フランス商工会議所 事業開発部 マネージング・ディレクター):異文化コミュニケーションの実践的側面を解説。
- 生田美弥子氏(北浜法律事務所 弁護士):日本の法制度の概要を紹介し、フランス法との主要な相違点・共通点を解説。
- Matthew Denver氏(EY Japan 税務シニアマネージャー):日本における税務実務の概要を説明。
午後は、ファミリーマートグループの子会社である株式会社ファミマデジタルワン代表取締役社長の中野和浩氏と面会し、同社のモバイル決済およびデジタル金融サービスプラットフォーム「FamiPay」について学んだ。日本の従来型小売企業が、信頼、データ、規模という強みを活用してフィンテック分野へと事業領域を拡大し、確立されたビジネスモデルと革新的な金融ソリューションの融合を理解する機会となった。
2日目:経済の戦略中核を担う銀行
2日目は、日本の銀行業界とその経済発展における役割に焦点を当てた。
午前はクレディ・アグリコル銀行 東京支店にて、国際銀行が日本市場でどのように事業を展開しているかを学習。
- Sylvain Legros氏(コーポレートプランニング部長)とNicolas Sauvage氏(クレディ・アグリコル生命保険 日本支社長)は、銀行の全体戦略および日本における生命保険事業の方針を解説。
- Nobuaki Moroi氏(航空機ファイナンス部門責任者)と小出村珠美氏(輸出ファイナンス部門責任者)は、国際貿易や航空機向けの金融ソリューションについて専門知識を共有。
- Mohamed-Cherif Lafram氏(CA生命保険 副CFO)は、高齢化社会における課題と展望について説明。
- 茶幡大策氏(サステナブルステナブル・インベストメント・バンキング責任者)は、ESG施策と持続可能な金融の企業戦略への統合について解説。
コンラッド東京でのワーキングランチでは、CACIBチームと意見交換を行い、金融・規制・戦略的意思決定の実務的知見を深めた。
午後は株式会社SBI新生銀行と面談し、国際展開、ストラクチャード・ファイナンス、ESG施策について学んだ。
- 藤木康寛氏(執行役員兼グループ海外事業統括部長)より、銀行のグローバル戦略と国際業務について説明。
- 長澤祐子氏(執行役員兼グループストラクチャードソリューション担当)より、企業成長と投資を支援するカスタマイズ金融ソリューションの開発について解説。
議論を通じ、日本の銀行が長期的な産業成長、人口動態対応、持続可能な開発における戦略的パートナーとして機能することが強調された。
3日目:法務・規制
3日目は、日本の金融システムを支える法的・規制的枠組みに焦点。
午前は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の弁護士 鼎博之氏、廣岡健司氏によるセッションで、日本のM&A市場、敵対的買収、コーポレートガバナンス、クロスボーダー取引に影響を与える法的特性を含めた詳細な分析を学んだ。
午後はTMI総合法律事務所の弁護士Laurent Dubois氏と面談し、フランス法と日本法の主要な相違点を議論。クロスボーダー取引の構造化、規制遵守、法的枠組みが企業戦略に与える影響についても理解を深めた。
4日目:ガバナンス・規制・マーケットインフラ
4日目は、日本の金融市場の透明性と安定性を支える機関を訪問。
東京証券取引所では、日本の資本市場における中心的役割について理解を深めた。続いて、金融庁の染川貴志氏、神宮泰祐氏との面談では、金融市場やプライベート・エクイティ分野における取り組みを含む金融庁の規制活動について詳細な説明を受けるとともに、日本におけるこれらの市場の発展を支援する同庁の役割について議論した。
最後に日本銀行を訪問し、歴史ある同施設のガイドツアーを体験した。
5日目:M&A・事業承継・日本の金融の未来
最終日は、日本のM&A市場の進化と、取引を円滑に進める上で重要な役割を果たすアドバイザリーファームについて、包括的に学んだ。
株式会社HCフィナンシャル・アドバイザー代表取締役の石川憲優氏によるセッションでは、高齢化や事業承継問題がディールフローに与える影響について、実務的な視点から解説。国内投資家にとっての課題と新たな機会を提示し、日本特有の企業環境および規制環境を乗り越える上でのアドバイザリーの専門性が持つ戦略的重要性が強調され、クロスボーダーおよび国内M&Aの仕組みに関する有益な洞察が参加者に提供された。
結論:戦略的視察研修旅行
今回の視察研修旅行を通じ、参加者は日本の金融エコシステムを統合的に理解。規制当局、金融機関、法制度、フィンテック企業、アドバイザリーファーム、マーケットインフラに至る幅広い知見を得た。単なる訪問にとどまらず、ESCPビジネススクールのエグゼクティブMBAプログラムの内容に沿った一貫した学習体験となった。
フランスと日本のビジネスの架け橋として活動する在日フランス商工会議所が実施した本プログラムにより、参加者は技術的知識と日本の金融システムが世界有数の経済でどのように機能しているかの理解を深めた。






